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大阪高等裁判所 昭和61年(ネ)943号 判決 1990年2月28日

主文

原判決中反訴請求部分を次のとおり変更する。

一  控訴人は、被控訴人に対し、別紙物件目録(一)記載の各土地を明け渡せ。

二  控訴人は、被控訴人に対し、昭和六二年七月二二日から右土地明渡しずみまで一か月金五万六九二〇円の割合による金員を支払え。

三  被控訴人のその余の反訴請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用中、反訴について生じた部分は、第一、二審ともこれを二分し、その一を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

五  この判決は、右一、二項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  申立て

一  控訴人

1  原判決中反訴請求部分を取り消す。

2  被控訴人の反訴請求を棄却する。

3  反訴について生じた訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

第二  主張

一  被控訴人の反訴請求原因

1  原判決添付物件目録記載の各土地(以下「本件土地」という。)は訴外亡甲野花子(以下「花子」という。)の所有であった。

2  花子は、昭和五五年四月、被控訴人に対し、本件土地を贈与し、被控訴人はこれを譲り受けた。

3  仮に右贈与が認められないとしても、被控訴人は、次のとおり、昭和五六年七月一〇日、花子の死亡による相続によって、本件土地のうち別紙物件目録(一)(以下「目録(一)」という。)記載の各土地の所有権を取得した。

(一) 花子は、昭和五〇年五月三一日当時、別紙物件目録(二)(以下「目録(二)」という。)の(1)ないし(9)記載の各土地を所有していたが、同日、大阪法務局所属公証人宅間達彦作成同年第一四二六号遺言公正証書(<証拠>、以下「本件公正証書」という。)で目録(二)の(1)ないし(3)、(5)ないし(7)記載の各土地を被控訴人に相続させる旨の遺言(以下「本件遺言」という。)をした。

(二) 花子は、昭和五二年七月二一日、目録(二)の(1)ないし(3)記載の各土地を合筆して目録(二)の(10)記載の土地とし、目録(二)の(4)ないし(9)記載の各土地を合筆して目録(二)の(11)記載の土地とし(以下目録(二)の(4)記載の土地を「旧三九番一三の土地」と、目録(二)の(5)記載の土地を「旧三九番一五の土地」と、目録(二)の(6)記載の土地を「旧三九番一六の土地」という。)、同年同月二五日、目録(二)の(10)記載の土地を分筆して目録(二)の(12)及び(13)記載の各土地とし(以下目録(二)の(12)記載の土地を「新三一番三の土地」という。)、目録(二)の(11)記載の土地を分筆して目録(二)の(14)及び(15)記載の各土地とし(以下目録(二)の(14)記載の土地を「新三九番一三の土地」という。)、同年八月二日、目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地を訴外株式会社エービー社(以下「エービー社」という。)に売り渡した。

(三) 目録(一)の(1)記載の土地は、前記のとおり目録(二)の(1)ないし(3)記載の各土地が合筆及び分筆された結果生じた新三一番三の土地であり、別紙図面(一)のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ範囲内の実測面積九四・六二平方メートルの土地である。なお、同図面のハ点とニ点を結ぶ直線は、新三一番三の土地の西側にある水路敷との境界線である。

(四) 目録(一)の(2)記載の土地部分は、前記のとおり目録(二)の(4)ないし(9)記載の各土地が合筆及び分筆された結果生じた新三九番一三の土地の一部であり、旧三九番一五の土地と旧三九番一六の土地のうち前記エービー社に売り渡した土地を除く部分を合わせた土地であり、別紙図面(一)のホ、ヘ、ト、チ、ホの各点を順次直線で結んだ範囲内の実測面積九三・五六平方メートルの土地である。なお、同図面のホ点とへ点を結ぶ直線は、新三九番一三の土地とその東側にある水路敷との境界線であり、同図面のト点とチ点を結ぶ直線は、旧三九番一五及び旧三九番一六の各土地と大阪市東成区中道一丁目三九番一四の土地(以下同所一丁目の土地については地番のみで表示する。)及び旧三九番一三の土地との境界線である。

(五) 被控訴人は、花子の子であるが、花子が昭和五六年七月一〇日死亡したことにより、本件遺言に基づき、目録(一)記載の各土地の所有権を取得した。

4  控訴人は、少くとも昭和五七年四月一日以降、本件土地を自動車置場及び通路として使用、占有している。

5  本件土地の昭和五七年四月一日以降の相当賃料は月額一五万円を下らない。また、目録(一)記載の各土地の同日以降の相当賃料は月額一〇万四七五七円を下らない。

6  よって、被控訴人は、控訴人に対し、所有権に基づき、本件土地の明渡しと昭和五七年四月一日から本件土地明渡しずみまで賃料相当の一か月金一五万円の割合による損害金の支払を求め、仮に被控訴人が目録(一)記載の各土地だけを所有するものとすれば、右各土地の明渡しと同日から右各土地明渡しずみまで賃料相当の一か月金一〇万四七五七円の割合による損害金の支払を求める。

二  控訴人の認否及び主張

1  反訴請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は否認する。

3  同3の事実中、(一)、(二)の事実及び被控訴人が花子の子であり、花子が昭和五六年七月一〇日死亡したことは認めるが、その余の事実は争う。本件遺言の対象となった目録(二)の(1)ないし(3)及び(5)ないし(7)記載の各土地は、被控訴人主張のとおり合筆及び分筆を経た結果現在存在せず、その範囲も特定できないから、本件遺言は執行できないものとなった。

4  同4の事実は認める。

5  同5の事実は否認する。

三  控訴人の抗弁

1  本件遺言の効力について

(一) 本件遺言は、民法一〇二三条二項により撤回されたものというべきである。すなわち、花子は、本件公正証書作成後、前記反訴請求原因3(二)のとおり、目録(二)の(1)ないし(3)記載の各土地及び目録(二)の(4)ないし(9)記載の各土地をそれぞれ合筆及び分筆し、本件遺言の対象物件のうち主要な部分である目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地をエービー社に売り渡し、その際本件土地も右各土地とともにエービー社に売り渡そうとし、さらに、これにより本件遺言が失効したものとして、昭和五六年には、新たに本件土地を含む財産につき遺言書を作成することを考慮していた(<証拠>参照)ことに照らすと、花子は、本件公正証書作成後において、本件遺言を撤回する意思を有していたことは明らかであり、右のような生前行為により本件遺言は撤回されたものというべきである。したがって、仮に本件土地と被控訴人が本件遺言によって取得すべき土地との間に重なり合う部分があったとしても、その範囲で本件遺言が有効なものとして扱われる余地はない。

(二) 花子は、昭和五六年七月九日、大阪法務局所属公証人坂東治作成同年第一五七〇号遺言公正証書(<証拠>、以下「昭和五六年の公正証書」という。)により、本件公正証書によってなした本件遺言は取り消されたものとする旨の遺言をしたところ、昭和五六年の公正証書による右遺言を無効とする大阪地方裁判所昭和五七年(ワ)第五二三〇号証書真否確認請求事件の判決は、昭和六三年一二月二〇日言渡しの最高裁判所判決(昭和六三年(オ)第一三二八号)によって確定した。したがって、いったん取り消された本件遺言は、民法一〇二五条によりその効力を復活しないから、効力を有しないものである。

2  仮に、被控訴人が、贈与又は遺贈により本件土地の所有権を取得したものであるとしても、被控訴人は、右所有権の取得につきその旨の登記を経由していないから、控訴人に対し、右所有権を対抗できない。

3  控訴人の占有権原について

仮に被控訴人が本件土地の所有権を有するとしても、控訴人は、次のとおり花子との間で、本件土地につき地上権設定契約、賃借権設定契約、地役権設定契約若しくは使用貸借契約を締結し、又は地上権、賃借権若しくは地役権を時効取得したものであるところ、被控訴人は、相続により、本件土地についての花子の地位を承継したから、控訴人は本件土地を使用する権利がある。

(一) 控訴人は、昭和一九年創業以来、本件土地を、隣接する他の土地(原判決添付図面に「31-4、31-6、31-9、39-2、39-10、39-11、39-20」と表示されている土地)と共に、工場、社屋等の工作物を所有するため一体不可分の土地として使用してきたものであり、本件土地上には、昭和四〇年六月従業員用食堂及び風呂場を、昭和五二年八月物置をそれぞれ建築した。

花子は、控訴人の創業者である訴外亡甲野太郎(以下「太郎」という。)の妻であり、昭和四九年一一月太郎が死亡したとき控訴人との間で、本件土地を従前と同様に控訴人が利用することを認め、昭和五二年八月、目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地をエービー社に売り渡した際にも、本件土地を控訴人のために留保し、さらに、昭和五三年九月、控訴人が本件土地の使用権原を明確にするため、本件土地の出入口に新たに門扉及び看板を設置した際にも、これを承認した。

控訴人は、本件土地使用の対価として、花子に対し、控訴人が使用していた前記隣設土地の分と併せて賃料を支払ってきたが、さらに、昭和五六年三月から本件土地の使用料として別途月額五万円を支払う旨約し、これを花子のために積み立てて支払った。

仮に右賃料の支払が認められないとしても、花子は控訴人の取締役であり、かつ、多くの株式を有する株主であったから、控訴人の経営努力、換言すれば、控訴人の全従業員の労務を期待して本件土地の使用を許諾していたものであり、右労務そのものが本件土地使用の対価と考えることができるから、この点からも控訴人は、本件土地使用の対価を花子に支払っていたものというべきである。

以上の事実によれば、控訴人は、創業当初から本件土地につき地上権又は賃借権を有していたものというべきであるが、そうでないとしても、花子が昭和五二年八月、本件土地をエービー社に売却しないで控訴人のために留保した時点、又は昭和五三年九月、控訴人の門扉及び看板の設置を承認した時点において、花子と控訴人との間に、控訴人を権利者とする地上権又は賃借権が設定されたものというべきである。

仮にそうでないとしても、控訴人が昭和五六年三月、花子に対し、本件土地の使用料として月額五万円を支払う旨約した時点において、花子と控訴人との間に、控訴人を権利者とする地上権又は賃借権が設定されたものというべきである。

仮に右地上権又は賃借権の設定契約が認められないとしても、控訴人は、花子が本件土地の所有権を取得した昭和三三年以降、本件土地を平穏、公然、善意、無過失で使用し、かつ、その間賃料を支払い続けてきたから、それから一〇年後の昭和四三年の経過により本件土地の地上権又は賃借権を時効取得したものであるが、仮にそうでないとしても、控訴人が本件土地の入口に門扉及び看板を設置した昭和三七年から一〇年後の昭和四七年の経過により本件土地の地上権又は賃借権を時効取得した。

(二) 仮に、控訴人が本件土地につき地上権又は賃借権を有するものと認められないとしても、控訴人は、三一番の四、六、三九番の二、一〇、一一、一四等の各土地上に社屋、社宅及び工場を所有して営業してきたものであるが、本件土地を、右各土地上において営む業務の運営上必要な荷物の搬出入口、従業員の出入口及び自動車の駐車場等として使用してきたものである。したがって、控訴人が昭和四六年に本社ビルを建築した際本件土地に向けて出入口を設け、本件土地に控訴人及びその関係者の自動車が駐車するようになり、花子がこれを黙認した時点、又は花子が昭和五二年八月、本件土地を控訴人のために留保した時点において、花子と控訴人との間に、控訴人が建物を所有する右各土地を要役地とし、本件土地を承役地とする地役権が設定されたものというべきである。

仮に右地役権設定契約が認められないとしても、右のとおり控訴人は、昭和四六年以降本件土地を平穏、公然、善意、無過失で自己の右業務の運営のために使用してきたものであるから、それから一〇年後の昭和五六年の経過により、控訴人が建物を所有する右各土地を要役地とし、本件土地を承役地とする地役権を時効取得した。

(三) 仮に、控訴人が本件土地につき地上権、賃借権又は地役権を有するものと認められないとしても、前記(一)及び(二)の事実によれば、花子は、遅くとも昭和五三年九月、控訴人が新たに門扉及び看板を設置した時点において、控訴人との間で、本件土地を、控訴人がその業務のために必要とする間、期間を定めず無償で使用させる旨の使用貸借契約を締結したものというべきである。

4  仮に、被控訴人が本件土地を所有し、かつ、控訴人が本件土地を使用する権原を有しないものであるとしても、被控訴人は控訴人の取締役であった者であり、控訴人の本件土地の利用の経緯及び必要性を十分認識していたものであるところ、専ら控訴人に損害を与える目的で本件土地の明渡し請求に及んだものであるから、右請求は信義則違反又は権利の濫用として許されない。

四  抗弁に対する被控訴人の認否

1  抗弁1について

(一) 抗弁1(一)の事実は争う。

民法一〇二三条は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為とが抵触する場合に、その抵触する部分につき遺言を取り消したものとみなす規定である。したがって、本件遺言のうちエービー社に売り渡した土地についての遺言部分が取り消されたものとみなされるのは当然であるが、右売買の対象外の土地についての遺言にまで右売買の効力が及ぶいわれはない。花子は、昭和五六年の公正証書による遺言で、本件遺言により被控訴人に相続させようとした目録(一)記載の各土地よりも更に広い範囲の本件土地を被控訴人に相続させようとしていたもので、花子が被控訴人に目録(一)記載の各土地を相続させる意思を維持していたことは明らかである。

(二) 同(二)の事実は争う。

控訴人は、本件遺言は昭和五六年の公正証書による遺言で取り消されたから、民法一〇二五条により復活しない旨主張するが、右取消しの効力が生じるのは、昭和五六年の公正証書による遺言が有効であることが前提であるから、右主張は失当である。

2  抗弁2の事実は争う。

3  抗弁3について

(一) 抗弁3(一)の事実中、花子が控訴人の創業者である太郎の妻であり、もと控訴人の取締役であり、株主であったことは認めるが、その余の事実は争う。

控訴人は、本件土地に隣設する太郎の所有地につき賃料を支払っていたが、花子の所有地につき賃料を支払ったことはない。控訴人が昭和五六年三月以降、月額五万円ずつを銀行に積み立てていたことは花子の関知しないことであり、当然花子は右積立金を受け取っていない。控訴人は、花子に無断で本件土地を使用していたにすぎないから、控訴人が地上権又は賃借権の設定を受けたり、地上権又は賃借権を時効取得することはあり得ない。

(二) 同(二)の事実は否認する。

(三) 同(三)の事実は否認する。

控訴人は、本件土地を無断で使用し、花子はこれに異議を述べなかっただけであるから、本件土地につき使用貸借契約は存在しないが、仮にそうでないとしても、右使用貸借契約は使用収益の期間及び使用の目的を定めないものであるから、被控訴人はいつでも本件土地の返還を請求し得るものである。

4  抗弁4の事実は否認する。

被控訴人は、昭和五六年、控訴人の取締役副社長の地位を失ったものであるが、花子の遺言の遺言執行者である西村捷三弁護士のとりなしで、控訴人から毎月七〇万円ずつ給料の仮払いを受ける約束をしたところ、控訴人は、昭和五九年三月、右給料の仮払いを突如中止した。そこで、被控訴人は、右給料の仮払いをするよう要求したが、控訴人がこれを無視したため、本件土地を利用して生計を維持しようと考え、本件土地の明渡請求に及んだものである。したがって、本件土地明渡しの請求はなんら信義則違反又は権利の濫用となるものではない。

五  被控訴人の再抗弁

仮に、本件土地についての使用貸借が控訴人において本件土地を駐車場として使用する目的のものであったとしても、控訴人は、花子を控訴人の取締役から退任させ、花子に対する退職金を支払う旨の約束を履行せず、花子の死後は、被控訴人を控訴人の取締役から解任し、さらに、前記のとおり被控訴人に対する給料の仮払いも中止した。以上の事実は、本件土地の借主である控訴人に、使用貸借における信頼関係を破壊する行為があったものというべきであるから、被控訴人は、控訴人に対し、昭和六二年七月二一日の本件口頭弁論期日において、右使用貸借契約を解約する旨の意思表示をした。

六  再抗弁に対する控訴人の認否

右再抗弁事実は争う。

花子は自ら控訴人の取締役を辞任したものであり、花子に対する退職金の支払が遅滞したのは、オイルショック前後の不景気で控訴人の経営が不振となったためで、そのことは花子にも十分説明し納得してもらった。また、被控訴人が控訴人の取締役の地位を喪失したのは任期満了によるものである。したがって、控訴人には使用貸借における信頼関係を破壊する行為は全くない。

第三  証拠<省略>

理由

一  反訴請求原因1(花子の本件土地の所有)及び4(控訴人の本件土地の使用、占有)の各事実は当事者間に争いがない。

二  被控訴人は、昭和五五年四月、花子から本件土地を譲り受けて所有権を取得した旨主張するので判断する。

<証拠>には右主張に沿う供述があり、また、<証拠>によれば、被控訴人が昭和五五年以降本件土地の固定資産税を支払っていたことが認められる。しかしながら、右乙号各証によれば、被控訴人による右固定資産税の支払は花子の代納者としての支払であること、及び<証拠>によれば、花子は生前、本件土地を所有するものとしてこれを被控訴人に相続させる意思を有していたことがそれぞれ認められるから、被控訴人本人の右供述はにわかに措信し難く、また、被控訴人が本件土地の固定資産税を支払っていたことだけで、被控訴人の右主張事実を認めることはできず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はないから、右主張は失当である。

三  被控訴人は、花子の死亡による相続により目録(一)記載の各土地の所有権を取得した旨主張するので判断する。

1  反訴請求原因3(一)(本件公正証書による本件遺言)及び(二)(花子による土地の合筆、分筆及び土地の売渡し)の各事実は当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実に、<証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。

(一)  花子による前記土地の合筆及び分筆の状況は別紙図面(二)記載のとおりであり(ただし、同図面の点線は右合筆前の各土地の境界線である。)、本件土地の東側には公道、新三一番三の土地と新三九番一三の土地との間には幅一・八三メートルないし一・八一メートルの水路敷がそれぞれ存在するが、右水路敷は、現況では宅地となっていて、右各土地と水路敷とを識別するものはなく、また、右道路及び水路敷の位置は右合筆及び分筆の前後を通じて変化がない。

(二)  本件遺言(<証拠>)により被控訴人が相続するものとされた目録(二)の(1)ないし(3)記載の各土地は、前記合筆、分筆及び目録(二)の(13)記載の土地がエービー社に売り渡された結果、目録(二)の(2)記載の土地と同(3)記載の土地の一部とが一体となって新三一番三の土地となり、これが花子の所有として残った。そして、新三一番三の土地は、その東側と西側は右公道と水路敷によって区画され、南側は右合筆前と同じ境界線で三一番六の土地と接し、北側は右分筆による境界線で目録(二)の(13)記載の土地と接している。

(三)  本件遺言により被控訴人が相続するものとされた目録(二)の(5)ないし(7)記載の各土地は、前記合筆、分筆及び目録(二)の(15)記載の土地がエービー社に売り渡された結果、旧三九番一五の土地と旧三九番一六の土地の一部とが旧三九番一三の土地の一部と一体となって新三九番一三の土地となりこれが花子の所有として残った。そして、新三九番一三の土地の一部となった旧三九番一五の土地と旧三九番一六の土地の一部は、その東側は前記水路敷によって区画され、南側は右合筆前と同じ境界線で三九番一一の土地と接し、西側のうち南の部分は右合筆前と同じ境界線で三九番一四の土地と接し、西側のうち北の部分は旧三九番一三の土地との境界線で区画され、北側は右分筆による境界線で目録(二)の(15)記載の土地と接している。

(四)  前記合筆及び分筆の際の境界線は大阪法務局天王寺出張所備付の各地積測量図(<証拠>はその写し)によって特定でき、新三一番三の土地(目録(一)の(1)記載の土地)の位置は別紙図面(一)のイ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次直線で結んだ範囲内の実測面積九四・六二平方メートルの土地であり、新三九番一三の土地となった旧三九番一五の土地及び旧三九番一六の土地の一部(目録(一)の(2)記載の土地)の位置は別紙図面(一)のホ、ヘ、ト、チ、ホの各点を順次直線で結んだ範囲内の実測面積九三・五六平方メートルの土地部分である。

以上の事実が認められ、右認定に反する<証拠>中の記載部分は採用できないし、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

3  被控訴人が花子の子であり、花子が昭和五六年七月一〇日死亡したことは当事者間に争いがない。

ところで、遺言において被相続人が特定の財産を共同相続人の一人に「相続させる」旨の意思表示をした場合に、これを遺産分割方法の指定(民法九〇八条)とみるか、遺贈(同法九六四条)とみるかは見解の分かれるところであるが、被相続人の意思が明確に遺贈であると解されない限り前者であると解するのが相当である。これを本件についてみると、<証拠>によれば、花子は、昭和五〇年五月三一日作成の本件公正証書において、独り被控訴人だけでなく、花子の相続人六名全員に各別の財産を「相続させる」旨の意思表示をしていることが認められるから、被控訴人に対してのみ明確に遺贈の意思であったものと認定することは不相当である。しかしながら、右のように被相続人が相続人に特定の財産を「相続させる」旨の遺言をすることによって遺産分割方法の指定をした場合には、右財産についての被相続人の意思は、遺留分の規定に反する場合を除いては絶対的に優先するものというべきであるから当該遺言において相続するものとされた相続人がその優先権を放棄する場合を除いては、審判若しくは判決によっても被相続人の意思を無視することはできないものというべきである。被控訴人は、本件反訴において、本件遺言によって相続するものと指定された前記各土地の一部分に当たる目録(一)記載の各土地の所有権を取得する意思を表明しているのであるから、花子の相続人間において遺産分割の協議又は審判を経るまでもなく、被控訴人が原裁判所においてその所有権の取得を主張したことが記録上明らかな昭和五九年一二月四日には、目録(一)記載の各土地の所有権を取得したものというべきである。

四  本件遺言の効力について

1  控訴人は、花子が本件公正証書作成後、本件遺言の重要な部分である目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地を売り渡し、さらに、昭和五六年には新たに遺言書の作成を考慮していたことなどの事実に照らすと、本件遺言は民法一〇二三条二項により撤回されたものというべきである旨主張するので判断する。

花子が本件公正証書作成後、目録(二)の(1)ないし(3)記載の各土地及び目録(二)の(4)ないし(9)記載の各土地をそれぞれ合筆及び分筆し、本件遺言の対象物件から目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地をエービー社に売り渡したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、花子は、エービー社に土地を売り渡すにあたり、当初は本件土地も含めて売却することを考えていたこと及び昭和五六年には新たに本件土地を含む財産について遺言書を作成しようとしていたことが認められる。

しかしながら、民法一〇二三条二項は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為(以下「生前処分」という。)とが抵触する場合には、その抵触する部分につき遺言を取り消したものとみなす旨を定めたものであるが、その法意は、遺言者が生前処分により表示した最終意思を重んずることにあると解すべきところ(最高裁判所昭和四三年一二月二四日第三小法廷判決、民集二三巻一三号三二七〇頁参照)、<証拠>によれば、花子は、右のとおりいったんは本件土地を含めてエービー社に売り渡すことを考えていたが、被控訴人の姉甲野雪子の説得などから、当時控訴人の副社長であった被控訴人の立場も考慮して本件土地の売却を思いとどまり、その後昭和五六年には、目録(一)記載の各土地を含む本件土地全部を被控訴人に相続させる旨の遺言書の作成を希望していたこと及び花子がエービー社に売却した土地は、花子が本件遺言により相続人ら六名全員にそれぞれ相続させるため指定した全財産の一部にすぎないことが認められ、これらの事実に前記三2で認定のとおり目録(一)記載の各土地が他の土地と明確に区別し得る土地であることを併せ考えると、本件遺言のうち目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地についての部分が、右各土地の売却という生前処分によって取り消されたものとみなされるのは当然であるが、右売却の対象外である目録(一)記載の各土地及び本件遺言のその余の部分については、右生前処分となんら抵触するものではないから、これが取り消されたものとみなされるいわれはない。

また、土地の合筆・分筆等の登記手続は、土地そのものの処分とはいえないから、合筆、分筆等により土地の特定が極めて困難となり、かつ、遺言の内容を実現するのにとくに支障となるような事情のある場合は格別、そうでない場合においては、合筆、分筆等の登記手続により、その部分の遺言が無効となるものではないと解すべきである。そして本件の場合には、被控訴人に相続させるべき土地の特定について、前記認定のとおりとくに支障を生ずることもないから、目録(一)記載の各土地に関する本件遺言が無効となることはないというべきである。

したがって、本件遺言が撤回されたものとする控訴人の右主張は失当である。

2  控訴人は、花子は昭和五六年の公正証書(<証拠>)により本件遺言は取り消されたものとする旨の遺言をし、同遺言はその後無効であるとの判決が確定したけれども、民法一〇二五条により、いったん取り消された本件遺言の効力は復活しない旨主張するが、同条は、遺言の取消しがいったん有効にされた場合の規定であって、先の遺言を取り消す旨の遺言が当初から効力を有しない場合には、遺言の撤回そのものが効力を生じていないのであるから、同条の適用はあり得ないものというべきである。<証拠>によれば、昭和五六年の公正証書による遺言が無効とされたのは、右公正証書作成当時、花子に有効な遺言をし得る精神能力が欠如していたと判断されたためであることが認められるから、控訴人の右主張は失当である。

五  控訴人は、被控訴人が本件遺言により目録(一)記載の各土地の所有権を取得したものであるとしても、被控訴人は右所有権の取得につき登記を経由していないから、控訴人に対し右所有権を対抗できない旨主張するが、前記認定のとおり、被控訴人は相続により右各土地の所有権を取得したものであるから、登記を経由しなくても、右所有権の取得をもって第三者に対抗し得るものというべきである。したがって、控訴人の右主張は失当である。

六  控訴人の占有権原について

1  控訴人は、控訴人と花子との間に本件土地につき、控訴人を権利者とする地上権が設定されたが、仮にそうでないとしても、控訴人は右地上権を時効取得した旨主張するので判断するに、控訴人が花子との間にその主張するような地上権設定契約を締結したものと認めるに足りる証拠はなく、また、控訴人が本件土地の地上権を自己のためにする意思をもって行使したものと認めるに足りる証拠はないから、右主張はいずれも失当である。

2  控訴人は、控訴人と花子との間に、本件土地につき、控訴人を借地権者とする賃借権が設定されたが、仮にそうでないとしても、控訴人は右賃借権を時効取得した旨主張するので判断するに、控訴人が花子との間にその主張するような賃借権設定契約を締結したものと認めるに足りる証拠はなく、また、控訴人が本件土地を賃借する意思で花子に対し賃料を支払っていたものと認めるに足りる証拠はないから、右主張はいずれも失当である。

控訴人は、花子に対し、本件土地の使用の対価として昭和五六年三月から月額五万円を支払う旨約し、これを花子のために積み立てて支払った旨主張するところ、<証拠>によれば、控訴人は昭和五六年三月から、本件土地に関し、花子に支払う目的で、毎月五万円ずつを、被控訴人名義で大阪商工信用金庫に定期積金として預金していたことが認められるが、右各証拠によれば、右預金は、当時控訴人の副社長であった被控訴人の提案で、花子に本件土地を無償で使用させてもらっている謝礼として、小遣又は盆、暮の中元、歳暮の名目で、花子に対し適宜交付するために積み立てたにすぎず、花子としては賃借権が生じることをおそれて、終始賃料とみなされるような金員を受け取る気持がなく、現実に控訴人から花子に右積立金が支払われたこともなかったことが認められるから、右のように金員を積み立てたからといって、控訴人が花子に本件土地の賃料を支払ったものということはできない。

また、控訴人は、花子は控訴人の取締役であり、かつ、多くの株式を保有する株主であったから、控訴人の全従業員の労務を期待して本件土地の使用を許諾したものであり、右労務そのものが本件土地使用の対価と考えることができる旨主張するが、たとい花子が控訴人の取締役であり、その株式を保有する株主であったとしても、控訴人の従業員の労務そのものが本件土地使用の対価となるものとは到底認め難いから、右主張は失当である。

3  控訴人は、控訴人と花子との間に、本件土地を承役地とする地役権が設定されたが、仮にそうでないとしても、控訴人は右地役権を時効取得した旨主張するので判断するに、控訴人が花子との間に、その主張するような地役権の設定契約を締結したものと認めるに足りる証拠はなく、また、控訴人が本件土地を承役地とする地役権を自己のためにする意思をもって行使したものと認めるに足りる証拠はないから、右主張はいずれも失当である。

4  控訴人は、花子は控訴人との間で本件土地を、控訴人がその業務のために使用する間、期間を定めず無償で使用させる旨の使用貸借契約を締結した旨主張するので判断する。

<証拠>によれば、次の事実が認められる。

(一)  控訴人は、花子の夫太郎が昭和一九年に設立した同人の個人企業的会社であり、同人が死亡した昭和四九年一一月二一日までは同人が代表取締役社長であったが、同人の死亡後はその長男である甲野一郎(以下「一郎」という。)と五男である被控訴人が共に代表取締役となり、一郎が社長、被控訴人が副社長となった。花子は、控訴人の株式多数を保有する株主で、昭和四五年二月から昭和五〇年五月までその取締役となった(花子が控訴人の創業者である太郎の妻であり、もと控訴人の取締役で株主であったことは当事者間に争いがない。)。

(二)  目録(二)の(1)ないし(9)記載の各土地を含む一帯の土地は、もと太郎の所有であり、控訴人においてこれを営業のために使用していたが、本件土地から北の部分は当初空地であったため、右空地部分を材料置場、通路、従業員のリクリエーションの場などとして使用していた。

(三)  花子は、昭和三三年三月、太郎から目録(二)の(1)ないし(9)記載の各土地等を譲り受けて所有者となったが、その後も右各土地の使用の状況は従前と同様であったところ、昭和四五年一〇月二六日、控訴人が花子から本件土地の南側に隣接する三九番一〇の土地を買い受け、昭和四六年、その土地上に四階建の本社ビルを建て、右建物の出入口を本件土地に向けて設けたが、花子はこのことにつきなんら異議を述べなかった。

(四)  花子は、太郎の死亡後一郎と不仲となり、昭和五二年に本件土地以北の土地(目録(二)の(1)ないし(9)記載の各土地)をエービー社に売却しようとしたが、長女である甲野雪子の説得などもあり、本件土地を控訴人のために留保することとし、目録(二)の(13)及び(15)記載の各土地だけをエービー社に売り渡した。

(五)  控訴人は、昭和三七年ころから、本件土地の東西の出入口に門扉を設置し、そこに看板を掲げていたところ、前記各土地がエービー社に売り渡された後の昭和五三年八月ころ、右門扉及び看板を新しいものと取り替え、本件土地を駐車場等として使用するようになったが、花子は、これにつき何ら異議を述べなかった。

以上の認定事実によれば、花子と控訴人との間に、昭和五三年八月ころまでに、控訴人が本件土地を、返還の時期を定めず、その業務のために無償で使用する旨の黙示の使用貸借契約が成立したものと認めるのが相当である。

そして、被控訴人は、前記認定のとおり、相続によって目録(一)記載の各土地の所有権を取得したものであるから、それとともに右使用貸借契約上の貸主の地位も承継したものというべきである。

七  被控訴人は、控訴人には右使用貸借における信頼関係を破壊する行為があったので、右使用貸借契約を解約した旨主張するので判断する。

被控訴人が昭和六二年七月二一日の本件口頭弁論期日において、控訴人に使用貸借における信頼関係を破壊する行為があったとして、控訴人に対し、目録(一)記載の各土地の使用貸借契約を解約する旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著な事実である。

<証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。

1  花子は、太郎の個人的会社であった控訴人を、同人の死後一郎が社長、被控訴人が副社長となり、両名が対等の立場で協力し、円滑に経営していくことを希望し、一郎と被控訴人は、昭和五〇年五月一八日、花子の右希望に沿う内容の「会社経営に関する覚書」(<証拠>)を作成した。

2  ところが、一郎が控訴人の社長として先に花子と約束した同人の退職金等の支払を遅滞したことなどから、一郎と花子との関係が不仲となっていった。そして、一郎は、花子が昭和五六年七月一〇日死亡した後、本件土地を被控訴人に相続させる旨等の遺言の記載された昭和五六年の公正証書が存在することを知るに及び、被控訴人をも嫌うようになり、昭和五七年五月一日、被控訴人を控訴人の代表取締役から解任し、次いで昭和五八年三月二二日、控訴会社の取締役からも退任させた。

3  そのようなことから、被控訴人と一郎又は控訴人との間に種々の紛争が生じるようになったところ、控訴人は、花子の遺言執行者となった西村捷三弁護士のとりなしで、被控訴人の生活保障として、給料の仮払いの名目で月額七〇万円を支払う旨約したが、その後一郎は、経理担当者に命じて、昭和五九年三月分及び四月分の仮払金の支払額をいずれも三〇万円とし、その後の分の支払を拒否させた。

4  そのような紛争の過程で、被控訴人は、昭和五九年二月、控訴人に対し、本件土地の所有権を昭和五五年四月の贈与又は昭和五六年の公正証書による遺言で取得したとして、昭和五八年四月以降月額一六万円の地代の支払を要求したところ、控訴人がこれを拒否したので、昭和五九年五月八日、本件土地の東西の出入口の門扉に施錠する等の自力救済行為に及び、ここに本件訴え(本訴、反訴)が提起されるに至った。

以上の認定事実によれば、花子の死亡後、控訴人の代表者である一郎と被控訴人との間に対立が生じ、それが次第に先鋭化し、そのために控訴人と被控訴人との間の使用貸借契約の当事者としての信頼関係がなくなり、目録(一)の各土地の貸主である被控訴人が、借主である控訴人に対し、右各土地を無償で使用させる理由は完全に失われるに至ったものと認めるのが相当である。したがって、被控訴人は、民法五九七条二項但書を類推して、右使用貸借契約を解約することができるものであると解する。

そうすると、目録(一)の各土地についての右使用貸借契約は、被控訴人が昭和六二年七月二一日にした前記解約の意思表示によって同日終了したものであり、被控訴人は、控訴人に対し、右各土地の明渡しを請求し得るものというべきである。

八  控訴人は、被控訴人の目録(一)記載の各土地の明渡し請求は信義則違反又は権利の濫用として許されない旨主張するので判断するに、前記七で認定した事実に、被控訴人が明渡しを請求し得る土地が本件土地全体でなく、目録(一)記載の各土地に限られていることを併せ考えると、被控訴人の右各土地の明渡し請求は何ら違法となるものではないから、控訴人の右主張は失当である。

九  以上のとおり、控訴人は、前記解約の意思表示をした日の翌日である昭和六二年七月二二日以降目録(一)記載の各土地を占有使用する権原を失ったものであり、同日以降、被控訴人に対し、右各土地の賃料相当の損害金を支払うべき義務があるところ、被控訴人は右各土地の相当賃料は月額一〇万四七五七円を下らない旨主張するので判断する。

<証拠>によれば、控訴人は、被控訴人を含む太郎・花子間の六名の子が共有する三一番四の土地のうち独身寮の敷地部分四二・三五坪(一三九・九九平方メートル)の昭和六一年一月一日以降の相当賃料を坪当り月額一〇〇〇円とみなし、被控訴人ら共有者に対し、右割合によって計算した賃料を支払っているところ、被控訴人も異議なくこれを受取っていることが認められるから、右土地と立地条件の異ならない目録(一)記載の各土地の昭和六二年七月二二日当時の相当賃料も右と同じ坪当り月額一〇〇〇円であると推認すべきであり、右認定を覆すに足りる証拠はない(なお、<証拠>によれば、控訴人は、被控訴人を含む太郎・花子間の六名の子が共有する旧工場の土地建物の相当賃料を坪当り月額五〇〇〇円とみなして、右割合によって計算した賃料を被控訴人ら共有者に支払っていることが認められるが、右は建物の賃料を含むものであるから、目録(一)記載の各土地の相当賃料を認定する資料とはなし得ない。)。したがって、実測面積の合計が五六・九二坪(一八八・一八平方メートル)の目録(一)記載の各土地の賃料相当損害金は月額五万六九二〇円である。

一〇  以上によれば、控訴人は、被控訴人に対し、目録(一)記載の各土地を明け渡し、かつ、昭和六二年七月二二日から右各土地の明渡しずみまで賃料相当の一か月金五万六九二〇円の割合による損害金を支払う義務があることとなり、被控訴人の、反訴請求は右認定の限度で理由があるが、その余はいずれも失当として棄却すべきものである。

よって、これと異なる原判決の反訴請求部分を右のとおり変更することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 日野原昌 裁判官 大須賀欣一 裁判官 加藤 誠)

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